滞る財政再建、黒字化先送り=アベノミクス、景気頼みの税収増

景気頼みの税収増がいつまで続くか見通せない中、20日投開票の自民党総裁選では財政再建も争点の一つだ。デフレ脱却に向けて経済政策「アベノミクス」を推進する安倍晋三首相は、10%への消費税率引き上げを2度延期。借金に頼らず政策経費をどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支(PB)の黒字化も未達成だ。
アベノミクスは大胆な金融緩和と財政出動が柱。2012年末に発足した第2次安倍内閣は日銀との連携で円高を円安に反転させ、企業業績と株価を回復させた。14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げたこともあり、12年度に43.9兆円だった税収は、18年度予算ベースで3割超増の59.1兆円と、バブル期並みになっている。
14年度の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナスに落ち込んだ。首相は増税が景気に与える悪影響を問題視。財務省などの反対を押し切って、10%への引き上げを15年10月から17年4月、さらに19年10月へと2度にわたり先送りした。
消費税収の使い道も見直し、一部を幼児教育無償化などに充てる。このため不足する政策経費を借金である国債の発行で賄う状況から抜け出せず、政府は今年6月、20年度までとしてきたPB黒字化の達成を25年度に延期した。内閣府の試算では、消費税10%実現と経済好調維持の前提でも25年のPBは2.4兆円の赤字で、PB黒字化にはさらなる増税や歳出抑制が避けられない。
首相は消費税率10%への引き上げについて「予定通りやりたい」と述べたが、さらなる税率引き上げには消極的とされる。一方、総裁候補の石破茂元幹事長は「(新設する)国民会議できちんと議論しなければならない」と述べ、10%超を排除していない。総裁選の結果は財政健全化の行方も左右しそうだ。
(2018/09/13 08:00 時事通信社)