『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』30年間も友を裏切り続けた

イギリスの上流階級に生まれた二人の男にはいくつもの共通点があったという。抑圧的で、権威主義的で偏屈、そして変人である父を持ち、確執を抱えていた。幼少期は虐待に近い躾を行う、寄宿舎学校でスパルタ式の教育を受け、権威に反感を抱き、長じてはケンブリッジ大学で学ぶ。イギリス紳士らしく、人を結び付けも、隔てもする礼儀正しさを常に失わない。自信に満ちた立ち振る舞いは、いかにも上流階級にふさわしい。ニコラス・エリオットは内気な性格を隠すため矢継ぎ早にジョークを繰り出し、キム・フィルビーは幼少期の疎外感からくる精神不安を紳士然とした態度で隠す。
二人はMI6というイギリスの諜報組織において、共に出世街道を進み、組織の中枢を占めるようになる。そして、この秘密クラブの中で多くの友人をつくり、クラブの身内に固い忠誠を誓っていた。
しかし、たった一つの違いがあった。それはエリオットが固い愛国心を基に行動していたのに対し、フィルビーは強固なイデオロギーのために、この秘密クラブを裏切っていたことである。フィルビーは、ソビエトがMI6に送り込んだ二重スパイであった。

多くの人々を30年以上にわたり欺き裏切り続け、二重生活を送っていたフィルビーは晩年にこう語っている。
“私はいつも個人レベルと政治レベルという二つのレベルで活動していた。二つが衝突したとき、私は政治を優先させなくてはならなかった。人を騙すのは好きではないし、それが友人となればなおされで、私は皆が考えているのとは違い、それについてひどくすまないと思っている”
しかし、「すまないと思っているからといって騙すのをやめなかった」と著者は結んでいる。 エリオットは晩年にフィルビーの事を「外面的には親切な男であった」が「内面的には残忍な男であったに違いない」とし「上品なヴェールの陰に隠れながら自惚れた自己中心的な男」に違いないと回想している。

『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』30年間も友を裏切り続けた男 - HONZ
http://honz.jp/articles/-/41451

「上流階級出身で正体隠せた」英MI6のキム・フィルビー ソ連との二重スパイ、衝撃の告白映像 http://www.sankei.com/world/news/160409/wor1604090011-n1.html (スパイ)