銭ゲバ

幼少期、極貧ゆえに愛する母を失い、カネの力をまざまざと見せつけられた少年蒲郡風太郎(がまごおり ふうたろう)。
青年に成長すると成り上がるために、大企業社長に取り入り、社長一家と会社を乗っ取ろうとたくらむ。邪魔になるものは容赦なく殺す。
そしてとうとう社長一家に取り入ることに成功し、社長を事故に見せかけて殺し、名実ともに社長の座を手にする。そのうち刑事に目をつけられる風太郎、それを一体いかにかわしていくのか。
また、宿敵として社会派作家の青年秋遊之助が登場、公害問題という社会悪の根源として風太郎に目を付けたが、次第に「銭ゲバ」として生きる風太郎の壮絶な生きざまそのものに興味を抱いていく。はたして彼は風太郎の闇を暴くことができるのか…
 というのが上巻。風太郎の顛末を軸にサスペンスとして読める。
下巻になると、財界の頂点を極めた風太郎は政界に進出することを決意。政財界の海千山千の魑魅魍魎たちにカネの力ですり寄り、蹴落とし、そして逆に罠に嵌められる…
殺人の容疑をかけられた風太郎、留置所から知事選に出馬、巧みな弁術で民衆を味方につけて当選。「銭ゲバ」はついに銭の力だけでなく、政治という力まで手に入れたのだった。
当選後、マスコミから「人間の幸福について」の原稿依頼をうけた風太郎、己の過去を回想しつつ彼が選んだ末路とは…

風太郎は唐突にピストル自殺を遂げて、物語は幕をおろす。
残ったのは風太郎の遺書
「いつも私だけが 正しかった この世にもし真実が あったとしたら それは私だ
私が死ぬのは 悪しき者どもから 私の心を守るためだ
私は死ぬ 私の勝ちだ 私は人生に勝った」
そして最後に、作家・秋遊之助による一文が読者に投げかけられる。

「てめえたちゃ みんな銭ゲバと同じだ もっとくさってるかもしれねえな 
それを証拠にゃ いけしゃあしゃあと 生きてられるじゃねえか」
〜〜〜〜〜
そう。「銭ゲバ風太郎は「この世の真実」であった。風太郎のみた世界は、「人間は悪であり、人間が作り出した社会もまた悪」という現実だった。

ジョージ秋山銭ゲバ』 〜社会はクソ、人は悪ズラ。銭ゲバは銭の夢をみるか? - 文芸的な、あまりに文芸
http://akihiko810.hatenablog.com/entry/2016/02/01/171901
(漫画)